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相談者は何をしにきたのか

先週末、2組(計4名)の方々に、個別指導を実施いたしました。

その感想を含めて、タイトルについて考えてみたいと思います。

 

あらかじめ用意された事例とはいえ、試験の場というのは、「相談者が仕事上の悩みを抱えているので、何かしらの解決策がほしいと考え、専門家(キャリアコンサルタント)に相談に来た」という状況です。

相談を受けるこちら側とすれば、「きちんとこの方のための解決策をご提案しなければ」と意気込んでしまう部分もあるかと思います。

そもそも、この仕事をしている以上、何らかの形で「お役に立ちたい」と思う気持ちがあるわけです。

みなさんもそうですよね。

であれば、「何をすれば役に立てるのか」、「どんなアドバイスであれば解決してあげられるのか」ということを考えるのは、至極もっともな思考であると思います。

 

では、20分という限られた相談時間の中で、あなた(キャリアコンサルタント)ができることは何でしょうか?

 

試験的にいうと、「問題把握」という言葉があります。

ここでよく使われる(使っていらっしゃる)言い方として、「真の問題」という言葉がありますよね。

そもそも、「真の問題」って何でしょうか?

 

相談者自身が「相談したい」と一番に感じていること。

そして、それに対してキャリアコンサルタントとして、課題であると感じたこと。

この二つを合わせて「問題把握」と呼んでいます。

ではこれが、「真の問題」なのでしょうか。

 

単純な例を用いて考えてみましょう。

相談者さんは再就職を考えています。

ですが、専業主婦の期間が長かったので、どんなところに応募したらいいのか、どんな仕事ならできそうなのか、さっぱりわかりません。

どうしたらいいのでしょうか…。

という方がいました。

この方の感じている問題、つまり相談したいことは何でしょうね?

応募先を決めたいのだけれど、どう選べばいいのかわからない、ということでしょうか。

これに対して、キャリアコンサルタントが考える問題点はなんでしょう。

いわゆる、自己理解ができておられないなぁ、とか。

(できること・やりたいこと・すべきことなどが整理できていないという表現もできますね)

また、就労市場等の情報収集もできておられないようです。

 

さて。

では、「真の問題」ってなんでしょうね?

 

実際には、上記の相談者の訴えを聞いたうえで、本当は何を相談したいと思っているのか、をきちんと一緒に考えていきます。

ひょっとしたら、「就職活動のやりかたそのものがわからない」と思っているのかもしれません。

また、「久しぶりに働こうと思ったけど、なんだかいろいろ不安だから進めない」のかもしれません。

さらに、「仕事復帰だけど、やっぱり家庭と両立はしたい。そんな都合よく働けるなんてできるのかしら。」と思っているかもしれません。

このように、話してくださった悩み、問題点から、さらに丁寧に聞いていくことによって、気づきがあったり、深いところにあったお悩みを取り出していくことが可能になるわけですね。

 

問題把握として、相談者さんがさらっと話してくださった内容に対して、キャリアコンサルタントとして考えることがあり、それをお伝えし、なるほど、そのせいでうまくいかないのか、という気づきがあったうえで、一緒に解決へと歩き出せる。

これが理想的な進め方ではあると思います。

 

今回、私が言いたいのは、キャリアコンサルタントの考える問題点を、抵抗感なくどうお伝えするか、ではありません。

相談者さんがさらっと言ってくださった悩みの中にある、もっと深い部分まで、どう一緒に入っていくことができるのか、ということです。

これができなければ、「相談者さんは今日、何をしにきたのか」がわからないと思っているのです。

いわゆる、主訴と見立てをきちんとご提示して、「真の問題」を把握・共有し、共同作業としての目標を立てていく。

これは理想形です。

ですが、受検生のロールプレイを見ていると、「主訴」がきちんと捉えられていません。

非常に表面的であると考えます。

もちろん、受容し共感的理解を示しながら、丁寧にお話はお聴きしている様子はうかがえるのです。

それでも、届いていない印象です。

なんというか、「真の問題」というか、「芯」という感じでしょうか。

かゆいところに手が届いていない、そんな感じが否めません。

 

今週末に試験の方もいらっしゃると思います。

また、週末は練習!という方もいらっしゃるでしょう。

 

大切にしてもらいたいのは、「○○なんです」とおっしゃった相談者さんは、なぜ○○だと言ったのか。なぜそう感じておられるのか、という、一歩深いところを気にかけてあげてください。

そのスキルが、「傾聴」であり、「積極技法」であると考えます。

そして、その2つの「聴き方」をしなさい、と細目には書かれており、それをすることで、気づきが生まれます。

また、自己理解や仕事理解を深める機会でもあるわけです。

 

みなさんが考える「関係構築」というのは、受容・共感しながら丁寧に話を聴くことだけではありません。

それだけでは、「基本的な態度はクリアしている」に留まってしまいます。

もう一度、細目のカウンセリングスキルの部分を読み直しましょう。

その内容は、評価区分の「関係構築力」と同じ文章です。

お話を聴くためのスキルを用いて、相談者が訴えていることを理解できるように話を進めていってください。

でなければ、「相談者は何をしにきたのか」がわからず、お時間の無駄をさせてしまうことになります。

 

お役に立てるということは、本当に相談したいことは何なのか、を理解し、共有することだと思いますよ。

もちろんこれは、試験対策ではなく、実務でも言えることではないでしょうか。

そして、「技能検定」である以上、実務スキルをチェックされているわけです。

 

聴くとは何か。

主訴とは何か。

もう一度、考えてみましょう。

ご自身のロールプレイを録音されている方は、ぜひ、聞き直してみましょう。

相談者さんは、「本当は何を訴えたかったのだろうか」ということを意識しながら。