キャリアコンサルティングにおいて、相談者からの信頼を得ることはとても重要なことです。
苦しい胸の内を明かそうとしているわけですから、それは当然のことですよね。
試験から離れて、少し考えてみましょう。
実務で相談に乗っている時、どんな態度で臨んでいるでしょうか。
また、何を心掛けているでしょうか。
私自身は、まず、相手の立場に立つということを考えています。
日常、学生対応をしているのですが、この年齢で「学生の立場に立つ」というのは、なかなか難しいことです。
自分自身が20歳前後の時を思い出そうとしても、あまり意味をなさない気がしていますし。
時代背景が違いますし、目指しているものや、持っているものも違います。
事情都合が変われば、「同じ」になることは無理だからです。
ですから、少しでも「今の」学生とは?ということを、考えるようにしています。
また、ここで役に立つのが「発達心理」ですよね。
学生の場合、いわゆる「アイデンティティの拡散」の状態であり、「アイデンティティの確立」を目指していくわけです。
近頃の学生の特徴というのも、参考にはなるかもしれません。
この、相手の立場に立って考える時、こちら側が「あなたたちの側と同じですよ」と伝えることに、意味があると考えています。
もちろん、私の考えです。
学生と話すときは、わざと学生たちが使っている言葉を使うこともあります。
(ワンチャンとか、ですかね)
すると、距離が近づいた印象になります。
(うちの学生だけかもしれませんけど)
距離が近くなる。
壁がなくなる。
そう感じられる瞬間は、とても大切だと思います。
相談事を話していて、同じように感じ、同じように考えてくれる、ということの安心感。
これが、信頼には欠かせない気がしています。
評価区分にある、「相談者にたいする受容的・共感的な態度及び誠実な態度」に関して、この「同じように感じ、同じように考える」という部分が、役に立っているのかな、と思います。
また、誠実な態度としては、「相手を否定しない」ということでしょうか。
ただし、否定的な考えを持ってしまったとき、無理をすると自己一致できません。
そして、この自己一致していない状況というのは、相手に伝わるような気がします。相手に否定を伝える時(つまり自己一致)、まずは受容すること、相手の気持ちや考えを受けとめることをします。
そのうえで、Iメッセージで伝えるのです。
伝え方は難しいです。
ダメ出しのように伝わらないように、「違う」と断定しないように、心がけます。
その気配りそのものが、誠実な態度になるのかな、と思います。
一般的には、この心がけを「維持」することで、信頼関係は築かれていくのかな、と思いますね。
でも、私たちはキャリアコンサルタントという専門家です。
実際に、相談者の話を聞く時には、「カウンセリングスキル」を活用するわけです。
感情的アプローチ、認知的アプローチ、行動的アプローチです。
カウンセリング理論で学んだことですよね。
また、相談者に気づきを促せるような問いかけなども有効です。
マイクロカウンセリングがわかりやすいかと思います。
関係構築=傾聴、だと考えている受検者は多いようです。
もちろん、傾聴することはラポール形成に欠かせません。
でも、傾聴=受容・共感、ではありません。
受容・共感は、「態度」なのです。
そして、傾聴は、「技法」です。
適切な技法を用いて相手のお話を積極的に聴く、これが傾聴です。
相手の発言に対する、こちらの「反応(言語・非言語)」には、技法が有効ということです。
試験において、この関係構築力がギリギリ60点という人を多く見ています。
そういった方々のほとんどが、問題把握や具体的展開で未達になっているようです。
傾聴すればいい、というわけではなく、「何のために傾聴をしているのか」ということを、「関係構築」の一歩先を考えてみてください。
信頼を得るために、相手を尊重しながら、そして、理解しようとすることで、面談は進んでいきます。
また、理解しようとすることこそが、信頼なのだと思います。
尊重するだけでは、60点で止まってしまうのではないでしょうか。
理解してこその、深い信頼です。
その理解が、この先の展開には重要なのです。
そして。
最後まで維持することが、より重要だと思いますよ。
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